クールな次期社長の甘い密約

「あ、いや、別に専務を疑ったワケじゃ……」


慌てて言い訳したけど、疑っていたのは隠しようのない事実。私はとんでもない墓穴を掘ってしまったんだ。


「私は専務の秘書ですからね。専務に関わる事は全て報告する義務があります」

「ちょっ、ちょっと待って下さい。私はただ、専務が誤解していたらマズいと思っただけで……決して専務がそんな人だとは……」

「思ってなかった?」

「あぁ……はい」

「まぁ、いいでしょう。専務には報告しないでおきます」


助かったと胸を撫で下ろしたのも束の間、倉田さんがほくそ笑み妙な事を言う。


「これは、貸しにしておきます。いつかこの借りを倍にして返して下さい」

「えっ?」

「当然でしょ? この事を専務に言えば、専務はアナタに失望するかもしれない。そうなってもいいのですか? これは、大きな貸しですよ」


人の弱みに付け込んでそんな事言うなんて、彼がこんな陰険な人だとは思わなかった。このままじゃ、事有るごとに今の件で脅され、倉田さんに逆らえなくなってしまう。


なんとかしなくてはと必死に考え思い付いたのが、例の純愛疑惑。


今まで彼の一途な想いに胸を痛め可哀想だなって思っていたのに……もう同情なんてしない!


「倉田さん、実は私もアナタの事で専務に黙っている事があるんです」


得意げに笑っていた倉田さんの顔色が変わり、運転席から身を乗り出してくる。


「ほ~っ、それはなんですか?」


ちょっぴり良心が痛んだが、こうなってしまったら仕方ない。


「倉田さんは、専務を愛していますね?」

< 131 / 366 >

この作品をシェア

pagetop