クールな次期社長の甘い密約
車は寄り道する事無く専務のマンションに到着し、部屋に入るとすぐに倉田さんが夕食を作ってくれた。
絶品料理を堪能すると専務が早々にバスルームに向かい、それが合図だったかの様に倉田さんもソファーから立ち上がる。
「……少し出掛けてきます」
「えっ? 今からですか?」
「今夜は大沢さんと二人っきりにして欲しいと専務に言われましたので、久しぶりに飲みに行ってきます」
倉田さんに気を使わせてしまったかなって恐縮したが、バカ扱いされた事を思い出し「そうですか」と素っ気なく返す。
「それでは、私が出たら玄関の施錠をお願いします」
「えっ、施錠?」
どうして? 倉田さんは鍵を持っているんだから自分で鍵を閉めて行けばいいのに。
そう言おうとした時にはもう、リビングに彼の姿はなかった。慌てて後を追い革靴を履き終えた背中に向かって「お気をつけて」と声を掛けたのに、倉田さんときたら何も言わずに玄関を出て行ってしまった。
もぉ~何よ。愛想のない陰険男!
今畜生とばかりに、あっかんべーと舌を出して鍵を掛けようとした時、突然ドアが開き、舌を出した状態で陰険男とガッツリ目が合ってまった。
げっ! 何? このフェイント……
出した舌を引っ込めるタイミングを逃してしまい、そのままベロンと舌を出したまま見つめ合っていると彼が真顔で迫ってくる。
「……無理はしないで下さい」
「へっ?」
「専務との事です。怖かったら正直にそう言いなさい。無理して抱かれる必要など、ないのですから……」