クールな次期社長の甘い密約
専務は泣き疲れてグッタリした私をベットまで運んでくれて、もう一時間以上、ずっと抱き締めてくれている。
こんなに寝心地がいいベットで、彼の温もりを感じながら眠りに付けるなんて、この上ない幸せだ。そう思っていたのに、なぜか全然眠れない。
私を抱く専務は既に気持ち良さげに寝息を立ている。だけど私はまんじりともせず天井を眺め、さっきの涙の訳を考えていた。
大好きな専務に抱かれたのは嬉しかった。だから決して悲しい涙じゃない。なのに、このモヤモヤした気持ちは何? それがなんなのか……いくら考えて分からない。
はぁ~もうベットに入って二時間になる。
一向に襲ってこない睡魔を恨めしく思いながら専務の腕を慎重に移動させ、鉛の様な重い体を起こして寝室を後にした。
足音を忍ばせ向かったのは、間接照明だけが点る薄暗いリビング。柔らかいレザーの感触を指先で確かめソファーに腰を下ろす。
さっき、ここで専務に抱かれたんだ……と思いつつ、もしかしたら全て夢だったんじゃないか? なんてぼんやり考えていた。でも、まだ鈍い痛みが残る下腹部が、紛れもない事実だと証明してくれている。
一つ大きく息を吐き、床に散乱している服の中からお風呂上りに専務が借してくれたワイシャツを手繰り寄せ、それを纏うと飲みかけのワインが入ったグラスに手を伸ばす。
お酒が入ったら眠くなるかなって思ったのに、余計に目が冴えてきて、この調子じゃ朝まで眠れないかも……
そう思い始めた時、微かに玄関の鍵が開く音がした。