クールな次期社長の甘い密約
険しい顔をして怒鳴った専務が、私の方を見ると少し照れた様にニッコリ笑う。
「これでもうコソコソする必要はない。俺と茉耶ちんは公認の仲だ」
「専務……」
あ、もしかして、こうなる事を専務は予想していたの? 分かっていてワザと私と出社した? 他の社員に私との関係を宣言する為に……
「あ、有難う……御座います」
戸惑いなからも嬉しさを隠し切れない。頬を紅色に染め愛しい人を見上げる。
「何か言われたら必ず俺に報告する様に。じゃあ、行くよ……」
「はい」
目の前を歩いて行く彼の広い背中が一段と大きく、とても頼もしく見えた。そして、この人が初めての人で本当に良かったと改めて思う。
誇らし気に専務を見送っていたら、突然後ろから腕を掴まれ強い力で引っ張られた。振り向いた先に居たのは怖い顔をした森山先輩。
先輩は私を受付カウンターに連れ込むとエントランスから見えない様に体を屈め、鬼の様な形相で睨んでくる。
森山先輩の様子を見て、てっきり怒鳴られるのだろうと身構えたんだけど、先輩の口から出た言葉は意外にもお褒めの言葉だった。
「大沢さん、よくやった!」
どうやらエントランスに居た社員の中に森山先輩の宿敵、木村さんが居た様で、彼女の悔しそうな顔を間近で見て感激したと早口で捲し立てる。
「そうですか……木村さんが……全然気付きませんでした」
木村さんには私も嫌な思いをさせられた事があったけど、彼女も可哀想な人なんだよね……
喜んでいる森山先輩には悪いが、ちょっぴり胸が痛んだ。