クールな次期社長の甘い密約
渋る森山先輩に頼み込み、仕事が終わると麗美さん達が食事するという"うなぎ屋さん"に向かった。
そのうなぎ屋さんはビルの一階にある老舗の高級店。炭火焼の香ばし匂いが歩道まで漂ってくる。
私と森山先輩はパブロフの犬状態でうなぎ屋さんを通り過ぎ、少し離れたカフェに入ってハンバーグドリアを注文した。
「ちょっと~ウナギとドリアじゃ全然違うんだけど~。私も蒲焼食べたいわ」
「同感です。でも、倉田さんとですよ? それでもウナギの方がいいですか?」
「あ……いや、やっぱ、ドリアでいい」
微妙な空気が漂う中、言葉少なにハンバーグドリアを平らげ、食後のコーヒーを二杯飲み終えたところで私のスマホが鳴った。
森山先輩と顔を見合わせ電話に出ると麗美さんの元気のない声が聞こえてくる。
「麗美さん、無事ですか?」
『うん、生きてるよ』
麗美さんはそれだけ言うと今からそっちに行くと言って電話を切った。数分後、カフェに現れた麗美さんはどこかぼんやりしていて足元がおぼつかない。
「何? 谷本さん酔ってるの?」
「はい……とてもシラフじゃ怖くて話しが出来ないと思って、日本酒を一気に飲んじゃいました」
「で、倉田課長はなんて?」
森山先輩ったら、あんなに関わりたくないって言ってたのに食い付きがハンパない。
「はい、それが……倉田課長、あの事には一切触れず、仕事には慣れたか?とか、何か困っている事はないか?とか……極々普通の話しで、なんだか拍子抜けしちゃいました」