クールな次期社長の甘い密約
なんでこのタイミングで倉田さんに会うかなぁ~……
専務の誘いを断るワケにもいかず、仕方なく車に乗ったけど、倉田さんの事が気になって落ち着かない。
「マンションに来るだろ?」
専務の言葉に頷き、必死で笑顔を作った時だった。鞄の中のスマホが鳴る。
「あ、お母さんだ」
専務の前で母親と話すのは気が引けたけど、専務が出た方がいいと言うので渋々電話に出ると……
バカデカい母親の声が脳天を貫き鼓膜が破れそうになる。堪らずスマホを耳から遠ざけるが、母親の言った言葉に驚き、再びスマホを耳に押し当てた。
「今、なんて言ったの?」
『だからぁ~今、茉耶のマンションの前に居るんだけど~』
「私のマンションの前って……お母さん東京に出て来てるの?」
『そうそう! ちょっと用事があってね。今夜は茉耶のマンションに泊めてもらおうと思って来たのに、アンタ居ないから……それで、どこに居るの?』
「あ、あぁ……今日は用事があって……」
専務に気を使い言葉を濁していると隣の専務が私の肩を突っつき耳打ちしてくる。
「お母さんが来てるんだったら帰った方がいい。茉耶ちんのマンションまで送るよ」
「えっ、いいんですか?」
「もちろん。せっかくお母さんが来てくれたんだ。俺の事は気にしなくていいから……」
最高に嬉しかった。でもそれは、久しぶりに母親に会えるからじゃない。倉田さんから解放されるって事が心の底から嬉しかったんだ。