クールな次期社長の甘い密約
過去の記憶を辿っても、今日ほど母親の存在が有り難いと思った事はない。だって母親は、私がイジメられる原因を作った張本人。昔から派手で無駄に明るい母親に振り回されてきたから正直、あまり関わりたくなかったんだ。
ダサダサの地味子になったのも母親のせいだもの……
でも今思えば、そのお陰で専務の目に留まり、こうやって付き合う事が出来たんだから感謝しなきゃいけないのかな?
幸せを噛み締め専務の肩に寄り掛かると専務が微笑んでくれる。けれど、この笑顔をずっと間近で見ていたいと思えば思うほど、倉田さんをなんとかしなければと焦ってしまう。
私が専務の為に出来る事はないのかな……
倉田さんの後ろ姿を眺め無い知恵を絞ってみるが、残念ながら何も浮かんでこない。気付けば、私の住むマンションに到着していた。
「有難う御座いました」
専務にお礼を言って車を降りようとした私の目に飛び込んできたのは、マンションの玄関前に立つ、ど派手な格好をした女性。
真っ赤なラメ入りのヒラヒラワンピースに大きな鳥の羽根が付いたツバの広い帽子。夜だというのにデカいサングラスを掛けている。
一段と派手になってる……お母さんは、いったい何を目指しているんだろう……
なんて考えていたら、専務が後ろからひょっこり顔を出し「もしかして……あの人が茉耶ちんのお母さん?」って唖然としている。
「はい……」
「あ、そ、そう……随分、ファショナブルな方だね……」
推測するに、専務もそれ以外の誉め言葉が思い浮かばなかったのだろう。