クールな次期社長の甘い密約
もう一度、専務にお礼を言って車を降り、退屈そうに突っ立ってる母親に声を掛けた。しかし、母親はサングラスをずらし不思議そうな顔をする。
「えっと、娘のお知り合いの方ですか?」
「何言ってるのよ。自分の娘の顔を忘れたの?」
「はぁ~? 冗談はやめてくれる? 娘の茉耶は地味で暗くて全然イケてない娘なんだから!」
確かに以前の私はそうだったけど……それ、母親が言うかなぁ~?
仕方ないから母親に接近して顔を前に突き出すと私の顔をペタペタ触り、またとんでもないデカい声で叫ぶ。
「うっそー! 茉耶ったらどうしちゃったの? めっちゃ可愛いじゃない。こんなに変わったって事は、まさか……彼氏が出来たとか?」
「話せば長くなるから……部屋に行ってゆっくり説明するよ」
母親の背中を押しマンションの玄関のロックを解除していたら、突然背後から「自分が彼氏です」って声がした。
「ゲッ! 専務……」
「お母さん、初めまして。茉耶さんとお付き合いさせて頂いてます。津島貴志と申します」
母親、暫し呆然――専務の顔をマジマジ見つめ放心状態だ。
そんな母親に専務はいつもの爽やかな笑顔を向け「食事がまだでしたら、今からご一緒にいかがですか?」って言ったんだ。
えっ!! お母さんと一緒に食事?
猛烈に焦ったけど、有り難い事に母親はもう夕食を済ませてきたらしい。私はホッと胸を撫で下ろすが、専務は凄く残念そう。
「それでしたら、明日の夜はどうでしょう? せっかくこちらまで来られたのですから是非、ご一緒にお食事でも……」
ちょっと待って。それは私が困る。