クールな次期社長の甘い密約

「いえ、母は明日早く帰ると思いますので、また次の機会にという事で……」


母親の腕を掴み逃げる様に玄関の扉を押したのだけど、母親がよけいな事を言ってくれる。


「茉耶ったら勝手に決めないでよね。帰るのは明後日よ」

「明日にしてよ」

「ヤダ! 貴志君がせっかく誘ってくれたんだもん。ご馳走してもらう~」


何がご馳走してもらう~よ! 人妻がそんな甘い声出してどうするのよ! それに、専務の事を貴志君だなんて……私もまだ名前で呼んだ事ないのに……


けれど、二人はもう待ち合わせの時間と場所の相談をしている。で、結局、明日の夜に食事をする事になり、専務は機嫌よく帰って行った。


マンションの部屋に入ると呑気な母親に文句を言うが、敵は全く人の話しを聞いていない。


「ねぇ、茉耶、さっきの貴志君だけど、苗字が津島だったよね? 津島物産となんか関係あるの?」

「うん、社長の息子で役職は専務だよ」

「津島物産の社長の息子? それ、マジ?」


さすがの母親も驚いたのか、目を白黒させ動揺している様だった。でもすぐに、ドヤ顔でふんぞり返る。


「どう? 東京で就職して良かったでしょ? 地元の信用金庫に勤めていたら、今でも陰気臭い地味な娘のままで、彼氏なんて出来なかったわよ。お母さんに感謝しなさい!」

「う……ん、それは感謝してる」

「でも、ホントに良かったね。これでお母さんも安心して眠れるよ。アンタには、私のせいでイヤな思いいっぱいさせちゃったからね……」

「えっ……」

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