クールな次期社長の甘い密約
――私は勝手に決めつけていた。
能天気で、誰がなんと言おうと我が道を爆進する母親には、私の辛い気持ちなど理解出来ないだろうって……でも、母親は気付いていたんだ。気付いていて、あえてその事には触れず、気付かないフリをしていた。
「……気にしてくれてたの?」
「当たり前でしょ? 茉耶は私の可愛い一人娘なんだから……このまま一生、誰とも付き合わず、結婚出来なかったらどうしょうって心配で心配で……
でもね、人嫌いの原因を作っちゃったのは私だし、私が何か言ったら、また茉耶を傷付ける事になるんじゃないかって思ってさ。だから、せめて茉耶が変われるきっかけだけでも作ってあげれたらと思ってね……」
「あ、だから私を東京に?」
「そうだよ。東京に行けば、色んな人が居るもの。変わった趣味の男もいっぱい居るしね」
変わった趣味って……私、変人にしか受け入れられない様なヤバい女だったの?
引きつった顔でどんより落ち込むが、母親は「これで一安心」って豪快に笑う。その笑顔を見てふと思う。
ずっと一緒に暮らしてきたのに、こんな風に母親と腹を割って話した事なかったなって。それはきっと、私が母親を避けていたから。
ごめんね……お母さん。
でもこれ以上、この話しが続いたら泣きそうで……
「で、お母さんは何しに東京に来たの?」
母親に涙を見せるのが恥ずかしというか……気まずくて、話題を変えていた。