クールな次期社長の甘い密約

母親の親、つまり、私の祖母はお金を出してもいいって言ってくれたそうだ。でも、和弥さんの意見も聞かないと返事が出来ないって言われたので、和弥さんの携帯番号を聞いて後で連絡するつもりでいたらしい。でも……


「世の中そんなに甘くないわね。見事に断られちゃった」


寂し気に笑う母親がやけに小さく見え、胸が締め付けられる思いだった。そして、その借金の一部が私の大学資金だったって事が何より辛かった。


「どうしてもっと早く言ってくれなかったの? 言ってくれたら大学なんか辞めて働いてた。少しでも返済に協力出来たのに……」

「バカね。茉耶を頼ろうなんてこれっぽっちも思ってないわよ。それに、大学はちゃんと卒業して欲しかった。これは、お父さんもおばあちゃんも同じ考えだったから。でもね……」


急に黙り込んだ母親がキャリーバックから大きな白い封筒を取り出し、私の前に置く。


「これは?」

「茉耶に彼氏が居るって分かったから、見せずに帰るつもりだったんだけど……」


なんだろうって思いながら封筒の中を覗くと四十代くらいのおじさんの写真が入っていた。


んっ? このへちゃむくれのおじさんは、誰?


「ウチの借金の事を知った美津子義姉さんがね、これを持ってきたのよ」


美津子義姉さんというのは、お父さんの姉で私の伯母だ。忙しい農繁期には全く姿を見せないのに、収穫が終わった頃にトラックでやって来て、野菜や米をしこたま持っていく図々しい人。だから私はあまり好きじゃなかった。


「美津子伯母さん、なんの目的でこれを?」

「茉耶にね……お見合いさせろって」

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