クールな次期社長の甘い密約
あ……私、余計な事言っちゃった?
焦る私を見て倉田さんの顔色が変わり、怒鳴りながら迫ってくる。
「言いなさい! どうして大沢さんが家族を失う事になるんですか? もしかして、お母様に何かあったんじゃ……」
「あ、いえ、母はピンピンしてます」
のらりくらりと話しをはぐらかしていたが、とうとう倉田さんが痺れを切らし本気で怒り出した。
「何も言わないのなら、アナタに口止めされていた例の話しを専務に報告します」
例の話しか……専務が私を利用して社長の座を狙っていると疑ったあれだ。あの時は、専務に知られたら嫌われるんじゃないかって怖かった。でも、もう隠す必要はない。
「構いません。どうせ専務とは終わりなんですから……」
専務の事は大好きだけど、家族を救う為には、あのへちゃむくれのお医者さんとお見合いしなきゃいけない。森山先輩が言うように専務を頼るって手もあるが、お金目当てだったのかって思われるのだけは絶対イヤ。
たとえ別れる事になっても、そんな風に思われたくないし、私の事で迷惑を掛けたくない。
しかし、専務との別れを口にしたとたん倉田さんの怒りが頂点に達し、胸ぐらを掴まれ壁に押し付けられた。
「ぐ、ぐるじい……倉田さん、放して……」
「いえ、理由を言うまで絶対に放しません」
「うぅっ……息が……死んじゃいますー」
「ご心配なく。絶対見つからない死体の隠し場所を知ってますから」
死体って……倉田さん本気なの? でも、本当に息が出来ない……意識が朦朧としてキラキラした綺麗な光が見える。あぁ……もうダメだ……