クールな次期社長の甘い密約
「ギ、ギブです! ギブアップ!」
「話しますか?」
「は、話します。話しますから……助けて……」
やっと解放され、激しく咳き込みながらヘナヘナと床に崩れ落ちる。
「死にませんでしたね」
「ゴホッゴホッ……そんな呑気な事よく言えますね! もう少しで本当に死ぬところだったんですよ! お花畑も見えたし……ゴホッ」
「ほ~っ、お花畑ですか? 良かったですね。そんな貴重な体験なかなか出来ませんよ」
この男、マジで殺してやりたい……
殺気立った視線を倉田さんに向けると、彼が私の背中をゆっくり擦り「大丈夫。人はそんな簡単には死にませんよ」って目を伏せる。
その声がとても寂し気で、自分の家族の事を思い出しているんじゃないか……そんな気がして、思わず息を呑む。
「では、約束です。話してくれますね」
仕方なく頷き、実家の借金を返す為、私がお見合いをしなくてはいけなくなったと事情を説明した。
話しを聞き終えた倉田さんは腕組をし、俯いたまま微動だにしない。
さすがに、実家が借金まみれの女が専務の彼女だなんてマズいよね。
「そういう事ですので、食事会はキャンセルして下さい」
座ったまま倉田さんに一礼し、立ち上がろとしたんだけど……
倉田さんが私の腕を掴み低い声で叫ぶ。
「大沢さんの家の借金は、私がなんとかします!」
「ちょっ……倉田さん、何言ってるんですか? 冗談はやめて下さい」
「冗談なんかじゃありません。その二千万の借金は、私が立て替えて支払います」