クールな次期社長の甘い密約
専務と私が……結婚?
衝撃が強すぎて座ったまま腰を抜かしてしまった。それは倉田さんも同じだった様で、言葉を失い呆然としている。でも、母親だけは違っていた。
「許す! 許すに決まってるじゃない! なんの問題もないわ。お父さんには私が言っとく。ダメだなんて言ったらトラクターでひき殺してやるから!」
物騒な事を口走り、専務の手を取って大喜び。
「では、明日にでもそちらの口座に二千万を振り込みます。これで、婚約成立ですね」
「うんうん、成立よ! こんな素敵な息子が出来るなんて夢みたいだわ~」
なんかワケが分からない内に、とんでもない展開になってしまった。専務と結婚出来るのは最高に嬉しいけど、驚きの方が大きくて全く実感が湧かない。
というか、こんな大事な事を簡単に決めてしまっていいの?
しかし、そんな私の不安をよそに、話しはとんとん拍子に進んでいく。
専務は、長期の休みが取れるお盆にでも私の実家に挨拶に行くと言い、私にも自分の実家に挨拶に来て欲しいと言う。
「専務のお宅に、私が?」
「結婚するんだ。当然だろ?」
専務のお父さんは社長だ。私、社長に挨拶しに行かなきゃいけないの? 考えただけで心臓が止まりそう……
「何も心配いらない。茉耶なら親父も大歓迎だよ」
専務ったら、何を根拠にそんな事……私みたいななんの取柄もない農家の娘が歓迎されるワケないのに。
それ以降は何も喉を通らず、食事会が終わって私のマンションまで送ってもらった後も、ずっと胃がキリキリ痛んで何も手に付かなかった。