クールな次期社長の甘い密約

私がそんな調子なのに、脳天気な母親は喜び勇んで父親に電話し、私の結婚が決まったと報告している。父親もそういう事ならとアッサリ結婚を認めてくれたみたいだ。


――順調過ぎて、なんだか怖い。


「なぁに? 茉耶ったら結婚が決まったのに浮かない顔しちゃって~」

「だって、専務と付き合い出してまだ三ヶ月だよ。早過ぎない? それに、社長に挨拶しに行かなきゃいけないし、気が重いなぁ……」

「もぉ~相変わらずヘタレねぇ~。そんなんじゃ、専務夫人は務まらないわよ。しっかりしなさい!」


そりゃ~超ポジティブで、周りの事を全く気にしない母親には理解出来ないだろうけど、私にとっては凄いプレッシャーだ。


痛む胃を押さえため息を漏らすと、母親がケラケラ笑いながら断言する。


「大丈夫。茉耶が貴志君の実家に挨拶に行ってイヤな思いなんて絶対しないから。きっと、向こうの家族は茉耶を温かく迎えてくれるわ。だから安心して行ってらっしゃい」


その揺るぎない自信はどこからくるんだろう?


そう言い切れる理由でもあるのかと訊ねてみるが「茉耶は私の娘なんだから心配いらないわ!」ってワケの分からない事を言うだけで、結局、なんの根拠もないぽい……母親の話しを真に受けた私がバカだった。


それより、倉田さんはどうしたかな? もしかしたら今頃、専務にこっぴどく叱られてるかもしれない。彼は何も悪い事してないのに、本当に申し訳ない事をしてしまった。


今すぐにでも謝りたかったけど、倉田さんの携帯番号を知らない。明日、会社に行ったら速攻で謝らないと……

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