クールな次期社長の甘い密約
――翌日
「ええーっ! 専務と婚約したぁ~?」
森山先輩には、色々心配を掛けたから報告しなくてはと思い、昨夜の事を話したが、さすがの森山先輩も展開の速さに付いていけないって感じだ。
「はい、なんかそんな事になっちゃいまして……私も戸惑っているんです」
「でも、倉田課長は災難だったわね。大沢さんを助けるつもりが専務の逆鱗に触れてしまったって事か……アナタと倉田課長が二人で勝手に決めちゃったから嫉妬したのかもね。専務も可愛いとこあるじゃない」
森山先輩はそう言って笑うが、私は全然笑えない。
とにかく早く倉田さんに謝りたくて内線を掛けようとしたんだけど、先輩が私の腕をツンツンして目配せする。
見れば、出社してきた社員の中に森山先輩の宿敵、秘書課の木村さんの姿があった。
「木村がアナタ達の婚約を知ったらどう思うかしらね?」
ほくそ笑む森山先輩の横顔がめっちゃ怖くて、この人を敵にまわしたくないと改めて思う。
「でもさ、木村って最近、ちょっと太ってきたよね。失恋してヤケ食いでもしたのかしら? もっとブクブク太ってデブになればいいのに」
言われてみれば、確かに少しふっくらした感じはあるけど、背筋を伸ばし堂々と歩いて行く姿は、失恋して落ち込んでいる様には見えない。
木村さんほどの美人ならすぐに彼氏が出来るだろうし、私が心配する事ないか……それより、倉田さんだ。彼に謝らないと……
秘書課に内線を掛け、倉田さんが電話口に出ると昨夜の母親の勘違いを平謝り。すると倉田さんが、とんでもない事を言い出した。