クールな次期社長の甘い密約

えっ? もう下に来てるの? だったら断れないか……倉田さんもいつ専務から呼び出しがあるが分からないから長居は出来ないだろうし、ちょっと会って話しをするだけならいいか。


後ろめたい事は何もないと自分を正当化し「すぐ下りて行きます」そう言って玄関のドアを勢いよく開けたんだけど……


「く、倉田さん?」

『どうも……』


彼の声がスマホと目の前から同時に聞こえてくる。


「下に居たんじゃないんですか? それに、オートロックなのに、どうして?」

「丁度、マンションの玄関から出できた人が居たので入らせてもらいました」


それならそうと言ってくれればいいのに……


「そ、そうですか。でも、わざわざ上まで迎えに来てくれなくても……また下りていかなきゃいけないのに」


顔を引きつらせ玄関のドアを閉めようとしたんだけど、倉田さんの手がそれを阻止し、私の頭の上から部屋の中を覗き込む。


「お母様は? もう帰られたのですか?」

「あ、はい」

「そうですか。お母様がいらっしゃったら食事でもご一緒にと思ったんですが……まぁでも、専務から電話があれば、すぐに戻らなければいけましせんし、大沢さんの部屋で話しましょうか?」

「へっ? 私の部屋で?」


それは困るとブンブン首を振ったのに、倉田さんは私を押し退け部屋の中に入って行く。慌てて彼の後を追うと既にローテブルの前にドカリと座り、まるで我が家の様にくつろいでいる。


この人、勝手に部屋に上がり込んで何考えてるの? 専務にバレたら自分だって困るのに……

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