クールな次期社長の甘い密約
「あの……これって、マズくないですか?」
「マズい? 何がマズいのですか?」
「だって、私の部屋に倉田さんと二人っきりだなんて……それに倉田さん、お腹すいてるでしょ? 何か食べに行った方がいいんじゃないですか?」
やんわり外に出ようと誘ってみたんだけど……
「大丈夫です。会社で出張土産の菓子をたらふく食べてきましたから。それより、私を男として意識してくれているとは光栄ですね」
「あ、いや、そういうつもりじゃ……」
「……なかったと?」
「はい」
機嫌が良かった倉田さんが急に無口になる。何か気に障る事を言ってしまったのかと思い「コーヒーでも入れましょう」って話しを逸らして逃げる様にキッチンに向かった。
危ない危ない。謝らなきゃいけないのに怒らせちゃマズい。
そして、ニュース番組を観ている倉田さんの前にマグカップを置き、まずは母親の勘違いを謝った。
「その事はもうご心配なく。お母様は何も知らなかったワケですし、専務もあれから特に怒ってはいませんでしたから」
「そうですか。良かった~」
倉田さんがイヤな思いをしてなかったって分かり、やっと肩の荷が下りた。で、次はいよいよ、あの事だ。
「それと、気になっていた事がありまして……倉田さんとウチの借金の話しをした後の事です。私がエレベーターに乗った時、倉田さん何か言い掛けましたよね?
"大沢さんは、不思議な人だ……アナタと居ると……"その続きはなんだったんでしょうか?」
コーヒーを飲みかけた倉田さんの手が止まり、マグカップの上の目が私に向けられた。