クールな次期社長の甘い密約

「ほーっ、あの時、私が言った事を覚えていたのですか?」


また、あの優しい笑顔を見せる倉田さんにドキッとして思わず目を逸らす。


「あ、えっと~別にいいんですけどね。途中だったから続きがちょっと気になっただけで……」


それは嘘。ホントは凄く気になっていた。でもそれを倉田さんに悟られるのがイヤで、ついつっけんどんな言い方をしてしまう。


そんな私をチラッと見た倉田さんがコーヒーを一口飲みフッと小さく笑った。


「大沢さんは不思議な人だ……アナタと居ると……心の底から笑える。そう言うつもりでした」

「笑える……?」

「ええ、もう何年も心の底から笑った事などありませんでした。恐らく、これからもそうだろうと思っていたのに、アナタと居ると本気で笑えるんです。笑い死にするんじゃないかと思ったのは生まれて初めての経験です。

それだけじゃない。喜怒哀楽を表に出す事が苦手でしたが、気付けば、怒りを露わにしたり、呆れたりと自然に反応してました。とにかくアナタの思考は理解不可能。とんでもない事を言い出しますからね。とても刺激的ですよ」


今まで倉田さんが私の質問に真剣に答えてくれた事などなかったからちょっと感動したけど、褒められてるのか、それともけなされてるのか……そこのところが微妙だ。


「えっと、世間一般から見れば、私より倉田さんの方が理解不能じゃないでしょうか? 何を考えているのか全く分からないし……大きなお世話かも知れませんが、もっと本当の自分を出した方がいいと思いますよ」

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