クールな次期社長の甘い密約
「倉田さんが失いたくないモノって、もしかして……」
「おや、珍しく分かったみたいですね」
倉田さんの照れくさそうな顔を見て確信した。
「こんなにハッキリ言われたら、鈍感の私でも分かります」
「ほぉ……」
「倉田さんが失いたくないモノは、専務ですね?」
「え゛っ?」
穏やかだった倉田さんの顔が見る見るうちに引きつり、口元がピクピク痙攣している。
「どうしてこの話しの流れで、その答えが返ってくるのか……それが理解不能です。大沢さんは、私を笑わそうとしているのですか?」
「いえ、かなり本気で当てにいったつもりですが……」
大真面目な私を蔑む様な目で見つめてた倉田さんが、ため息を付く。
「……まぁ、そんなところがアナタらしい」
「はぁ?」
脱力気味の倉田さんを眺め首を傾げると突然、両肩を掴まれた。
「ひぃ~っ!」
また、お花畑かと肝を冷したが、予想に反してその手はそのまま私の肩を押し、凄い勢いで床に押し倒される。
ある意味、お花畑よりヤバい展開になってしまった。
「もうそろそろ、私が専務を好きだという妄想を頭の中から消してもらえませんか? 前にも言った通り、私の恋愛対象は女性です。専務がどんなに魅力的な男性でも、ときめく事はありません」
倉田さんの息が掛かるほど近い距離で諭され、動揺しまくりの私。
ここで反論などしようものなら何をされるか分からない。だから、取りあえず素直に頷く。すると倉田さんが私の胸に顔を埋め、囁く様なとても小さな声で言ったんだ。
「私が失いたくないモノ……それは、大沢さん、アタナですよ」