クールな次期社長の甘い密約
遠目からでも麗美さんの顔が強張っているのがハッキリ分かった。そして、今まで静まり返っていた社食内がザワつき、あちらこちらからヒソヒソ話しが聞こえてくる。
酷い……他の社員が大勢居る前で、そんな事言うなんて……
一気に頭に血がのぼり、気付けば二人の元に駆け寄っていた。
「小沢さん、自分が何を言ってるか分かってるの?」
「ええ、分かってるわ。別に嘘を言ってるワケじゃないし、なんの問題もないでしょ? でも、そこまでして秘書課に配属されたかったとは驚きね。私には真似出来ないわ~」
あっけらかんとしたその物言いに私の理性は完全に吹っ飛び、冷静さを失っていく。
もう自分の感情をコントロール出来なくなっていたんだ……
社食を出て行こうとしていた小沢さんを追いかけ、彼女の肩を掴むと怒りに任せ、思いっきり頬を平手打ちしていた。
渇いた音と共に小沢さんが頬を押さえて廊下に倒れ込む。が、それでもまだ怒りが治まらず、小沢さんに掴み掛ろうした。すると麗美さんが私を背後から羽交い絞めにし、悲痛な声で叫ぶ。
「茉耶ちん、ダメだよ! 私はなんとも思ってないんだからやめて!」
「麗美さん、放して! こんな失礼な事言う人、絶対許せない」
麗美さんと揉み合っている間も小沢さんは私達を睨み付けていた。それがまた憎らしくて、麗美さんの腕を振り払い小沢さんに飛び掛かる。
その時「やめろ!」という声がして、私の体がフワリと浮き上がった。
私を抱き上げた力強い腕は……「せ、専務……」
「ここは社内だぞ。わきまえろ!」