クールな次期社長の甘い密約
えっ? なんとかって……?
意味が分からず、カウンターを出た所でポカンとしていると、同じくポカンとしていた森山先輩に向かってその男性が「大沢さんを、お借りします」って言ったんだ。
お借りしますって事は、私、どこかに連れて行かれるれるの?
突然現れた正体不明の男性に腕を掴まれ、成すすべなくエレベーターホールへと連行されて行く私。
「ちょっ、あの……どこに行くんでしょうか?」……そして、この人は、誰?
彼の大きな歩幅に着いていけず、ふらつきながら男性の顔を見上げるが、無表情の男性は何も答えてはくれない。で、背中を強く押され乗せられたエレベターが到着したのは、地下駐車場。
「時間がないので急ぎます」
やっと口を開いたと思えば、この一言でまただんまりを決め込む。全くなんの説明もないまま黒塗りの高級車に押し込まれ、その直後、車は凄い勢いで急発進した。
いきなり強烈なGが掛かり、体は座席に張り付いたまま動かない。そして、駐車場のカーブでタイヤが鳴るほど強引にハンドルを切るものだから、曲がるたびに小柄な私は後部座席で転げ回っていた。
地上に出ても同様。更にスピードを上げた車は、前の車を芸術的なドライビングテクニックでかわし、縫う様に走っていく。
何をこんなに急いでいるんだろう……もしかしてこの人、津島物産の表に出せないダークな部分を専門に扱っているヤバい人なんじゃ……専務の逆鱗に触れた私は、もう必要ないと判断され闇に葬られる事になったとか?