クールな次期社長の甘い密約
うそ……まだ社長に挨拶もしてないのに、会社の人達に言っちゃっていいの?
私も唖然呆然! もちろん専務が皆の前で宣言してくれたのは嬉しかったけど、それ以上に、ここに居る社員の人達全員の注目を一身に浴びている事に戸惑っていた。
私みたいな平凡な女が専務と結婚するとなれば、快く思わない人が居てもおかしくない。また昔みたいに罵声を浴びせられるんじゃないか……一瞬、そんな不安が頭を過る。
でも、麗美さんが「おめでとう」と言って手を叩き出すとそれにつられ、徐々にまばらな拍手が聞こえ出す。遂には、ここに居る全ての人が温かい拍手で私と専務を祝ってくれた。
あぁ……こんな事って……私を専務の妻として認めてくれるの?
鳴り止まぬ拍手と祝福の言葉に感激して溢れ出る涙を抑える事が出来ない。嬉しさの余り専務の顔を見上げれば、少し照れくさそうな顔で微笑んでいる。
でもその時、ただ一人だけ、憎悪に満ちた目で私達を睨んでいる人物が居る事に気付いた。
小沢さんだ……彼女は唇を噛み締め、握り締めた両手を震わせている。が、何を思ったか、突然小沢さんが走り出す。
彼女が駆け寄った先に居たのは、常務。常務は小沢さんに何か話し掛けると彼女の背中を軽くポンポンと叩き、慰めている様に見えた。
その光景を目にし、鳥肌が立つ。常務は宮川先生の同級生だ。小沢さんを解雇にしたとなれば、常務も面白くないはず。
これってヤバいかも……そう思った時、小沢さんの怒号が廊下に響き渡った。
「この事は、国会議員をしてる伯父に報告させてもらうわ!」