クールな次期社長の甘い密約

「あぁ、俺のじいさんは大原源治さんに命を助けられたんだ。大原源治さんがじいさんを助けてくれなかったら、今頃、親父も……そして、俺もこの世には居ない。

いや、それだけじゃない。津島物産も存在しなかった。津島家にとって大原源治さんは大恩人なんだよ」

「私のひいおじいさんが……大恩人?」


会長が涙を拭いながらコクリと頷く。


「そうじゃよ。あのお方は、自分の命を犠牲にしてワシを助けてくれたんじゃ……」


そう切り出した会長が遠い目をして過去の出来事を話し出す。



――時は昭和二十年。第二次世界大戦終戦の年。


二十歳の若者だった会長は中国の激戦地に居た。会長が所属していた小隊の隊長が私の曾祖父、大原源治だったそうだ。


会長達は敵の司令部を攻撃するよう命令を受けたが、戦況は厳しく敵軍に追い詰められていた。食料も銃弾も底を付き、山林をさまよう日々が数日続いた早朝の事。敵軍の襲撃を受け、仲間が次々に倒れていく。


もうここまでかと死を覚悟した会長は敵軍に突っ込もうとしたらしい。でもその時、会長の腕を掴んだのが曾祖父の大原源治だった。


曾祖父は、まだ若い会長に犬死にはするなと諭し、逃げろと言ったそうだ。しかし会長はそれを断り銃剣を構え駆け出そうとした……


すると真っ青な空にいくつもの黒い物体が飛んでくるのが見え、それが近くに落下すると凄まじい爆発音と共に土煙が舞い上がり、何も見えなくなって何も聞こえなくなった。

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