クールな次期社長の甘い密約
「俺に聞きたい事?」
口から心臓が飛び出しそうなくらい緊張していた。でも、聞かなきゃダメ。確かめなきゃいけないんだと自分に言い聞かせ、深呼吸をして専務を見つめる。
「は、はい……専務は、私が大原源治のひ孫じゃなくても結婚しょうと言ってくれましたか?」
微笑んでいた専務の顔から一瞬、笑顔が消えた。
「なぜ、そんな事を聞く?」
「なぜって……専務は私が大原源治のひ孫だと初めから知っていたんですよね。だから興味を持ってくれたのかなって思って……」
「……なるほど」
グラスのワインを一気に飲み干した専務が私から離れソファーに腰を下ろす。そして、ゆっくり振り返った。
「あ……」
疑う様な事を言った私に怒っているんだろうと思ったのに、その顔はいつもの爽やかな笑顔だった。
「茉耶ちんがそんな風に思っていたとは心外だな。俺はそんなつもりで君を好きになったんじゃない。まぁ、そう考えてしまう茉耶ちんの気持ちは分からないでもないが……
でも、俺は君が大原源治のひ孫じゃなかったとしても結婚したいと思ったよ。たまたま茉耶ちんが大原源治のひ孫だったというだけの事さ」
「専務……」
否定してくるのは想定内だったけど、少しの動揺も見せず、落ち着き払っている専務を見て私の方が動揺してしまった。
それって、ホントに本心なのかな?
倉田さんの顔が浮かび、どっちの言葉を信じていいのか分からず困惑していると、専務がソファーの背もたれから身を乗り出して私の左手を掴んだ。
フワリと包み込まれた手の甲に専務がキスをした直後、ヒヤリと冷たい何かが薬指に触れた――……