クールな次期社長の甘い密約

それ以上、何も言えなかった。


でも、私と結婚という形を取りたいだけなら、こんな凄いダイヤのリングを用意するだろうか?


確かに初めは倉田さんの言う様に、恋愛感情などなく社長になる為に私を利用しようとしていたのかもしれない。でも今は、本気で私を愛してくれてるのかも……


そうだったらどんなにいいか……けれど、そう思えば思うほど、心の中で不安という名の闇が広がっていく。


……信じたい。専務を信じたい。


縋る様な目で専務を見つめると彼が私の後頭部を抱え、柔らかな唇をソッと押し当ててくる。


「おいで、いっぱい愛してあげるから……」


専務に対する不信感が消えたワケじゃない。でも、やっぱり私は専務が好きだから……


彼に促されベットルームに行くと私達は何度もキスを交わし、肌を重ねて愛を確かめ合う。しかし、専務の逞しい腕の中に居ても、左手の薬指に光る指輪が視界に入るたび、胸が痛んだ。


「俺と茉耶は体の相性もいい。茉耶もそう思うだろ?」

「は……い」


こんなに強く抱き締められているのに、無性に寂しくて私の体は抜け殻の様だった――……



――翌朝、目を覚ますと室内はまだ薄暗く、もう少し寝ようと瞼を閉じてみたが、目が冴えて眠れない。


仕方なく体を起こし、暫くの間、専務の寝顔を眺めていたんだけど、トイレに行きたくなったので専務を起こさない様に静かにベットルームを出て玄関横のトイレに向かった。


そしてトイレを出てベットルームに戻ろうとした時、視界に入ったドアに私の目は釘付けになる。


倉田さん……

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