クールな次期社長の甘い密約

物音一つしない静まり返った廊下で、私は倉田さんの部屋のドアをぼんやり眺めていた。


もしかしたらこのドアが開き、倉田さんが顔を覗かせるんじゃないか……そんな事を期待している自分が居る。


私ったら何考えてんだろう。いくら早起きの倉田さんでも、夜明け前に起きてるワケないじゃない……まだ寝てるよね。


苦笑いを浮かべ、ベットルームに戻ろうとした時、ドアノブが小さな音を立て淡い光が廊下に漏れ広がった。


えっ……なんで?


暗い廊下で幽霊みたいに突っ立っている姿を見られたくなくて、逃げる様に歩き出すと背後から倉田さんの声がする。


「――眠れないのですか?」


あぁ……見つかってしまった。


背中を丸め振り返れば、普段と全く違う風貌の倉田さんが心配そうな顔で私を見つめていた。


「倉田さんが……パジャマ着てる」

「はぁ? 普通、誰でも寝る時はパジャマでしょ?」

「そうですけど、スーツ姿以外の倉田さん見た事なかったから……それに、オールバックじゃないし」


いつもの彼からは想像も出来ない大きなドット柄の可愛いパジャマに、サラサラの黒髪……まるで別人だ。


「スーツを着て寝ているとでも思っていたのですか? 相変わらずマヌケな事を言いますね。」

「だって、倉田さんぽくないから……」


思わずプッと吹き出すと、倉田さんがドアを全開にし「どうぞ、入って下さい」なんて言うから驚いてしまった。


「あ、専務が居ますし、それはマズいですよ」

「大丈夫です。専務は一度眠ったら朝まで絶対に起きませんから。さぁ、入って」

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