クールな次期社長の甘い密約

一瞬、迷ったけど、倉田さんがそう言うのならと彼の横をすり抜け、恐る恐る部屋に入る。


八畳ほどの部屋は実にシンプルで、ベットと小さな机と椅子があるだけでガランとしていた。


「この部屋に人が来る事を想定していませんでしたから、ソファーも何もありません。適当にベットの上にでも座って下さい」


言われるままベットに腰を下ろし、ソワソワと辺りを見渡していると、いきなり倉田さんが核心に迫ってくる。


「それで、専務の気持ちは確認出来たのですか?」

「あ……」


私は専務から贈られた指輪を彼に見せ、小さなため息を付く。そして、専務を信じる事に決めたと告げた。結納金の事を言おうと思ったけど、それを言ったところでどうにもならない。


複雑な表情の倉田さんを直視する事が出来ず、視線を落とすと彼は私の肩を揺らし「本当にそれでいいんですか?」と何度も聞いてくる。


やめて……そんなにしつこく聞かれたら、せっかく決意が揺らいでしまう。


「専務は私を愛してるって言ってくれました。それに、周りの人達も私と専務の結婚を喜んでくれています」

「私は大沢さんの気持ちを聞いているんです。アナタに後悔して欲しくないから……」


倉田さんの言葉が胸に突き刺さり、心の奥底に抑え込んでいた不安が顔を覗かせる。そして、その不安が涙となって溢れてきた。


「倉田さん、私……」


もうどうしていいか分からず、気付けば、目の前の倉田さんにしがみ付いていた――

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