クールな次期社長の甘い密約

前屈みになった倉田さんが私の背中で両腕を交差させる。


「私が専務に、大沢さんを利用しようだなんてバカげた事を言わなければ、アナタを苦しめる事はなかった……本当に、すみません」


切なげな声に小さく首を降り、倉田さんの胸に額を付けると薄い綿のパジャマ越しに彼の心臓の音が聞こえてくる。


規則的に響くその音を聞いていたら、乱れていた心が落ち着きを取り戻し、とても穏やかな気持ちになった。


なんだろう……この感じ。専務に抱かれている時よりも満たされている。


自然に瞼が閉じ、このまま、ずっとこうしていたいと思ってしまう。



あ……もしかして私、倉田さんの事を……


しかし、それを認めるワケにはいかなかった。


違う。そんなはずはない。倉田さんは専務の秘書で、専務が一番信頼してる人だ。そんな人を好きになるなんて有り得ない。うぅん、有っちゃいけないんだ。


「私ったら、何してんだろう。ごめんなさい……」


やっと自分がとんでもない事をしているって気付き、慌てて倉田さんの胸を押す。でも、彼の温もりを手放すとまた不安になり、今まで顔を埋めていた広い胸が恋しくなる。


すると「謝る必要はありません」そう言った倉田さんが再び私を抱き寄せた。


「倉田……さん」

「私の気持ちは知っているでしょ? 好きな女性に抱き付かれて嬉しくないはずがない。しかし、専務秘書の私が専務からアナタを奪い、自分のモノにする……などという非常識なマネは、出来ない」

「あ……」

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