クールな次期社長の甘い密約
このシチュエーションで拒絶されたのが思いの外ショックで、そんな自分に驚いていた。
私は、自分でも気付かないうちに、倉田さんを求めていたんだ……
そう自覚したばかりの私を抱きすくめ、倉田さんはいつもの調子で淡々と話し出す。
「誤解しないで下さい。私は大沢さんの気を引こうとしてあの話しをしたのではありません。
専務に社長になって欲しと思っていますが、その為にアナタを騙し、不幸にするのは耐えられなかった。ですから、大沢さんが全てを知った上で、後悔しない判断をして欲しくてあの話しをしたんですよ」
倉田さんは純粋に私の幸せを願っくれていたけど、私を自分のモノにするつもりはない。そういう事なの?
彼のパジャマの裾をギュッと握り、一呼吸おいて確かめてみる。
「それが、倉田さんの本心なのですか?」
「そうです」
即答する彼の声を聞いて思った。倉田さんは、男性である前に専務の秘書なんだ。倉田さんにとっての一番は、何があっても専務。そんな彼が私の為に専務を裏切ってまで真実を話してくれた。
それは倉田さんにとって、とても辛い選択だったはず。
「……倉田さんの気持ちよく分かりました。私の事、心配してくれて有難う御座います。でも……」
「でも、なんですか?」
「少しだけ……後一分……いえ、三十秒でいいですから、このままで居させて……」
私は自分の気持ちを抑えられず、夢中で彼の腰に手をまわし、力を込めて倉田さんを抱き締めていた。