クールな次期社長の甘い密約
「……もうそろそろ、戻った方がいい」
倉田さんにそう言われ、渋々ベットルームに戻ったが、専務の寝顔を見た瞬間、罪悪感でいっぱいになる。
私は専務から贈られた婚約指輪をしたまま倉田さんを抱き締めてしまったんだ。もし専務が私を本気で愛してくれていてこの指輪をくれたのなら、これは、とんでもない裏切りだ。
専務に申し訳ないという気持ちで胸が押し潰されそうになり、ベットの隅に座って小刻みに震えていた。
専務が信じられないから倉田さんを好きになっただなんて、なんの言い訳にもならない。それに、倉田さんもそんな事望んでない。
――この想いは封印しなきゃいけないんだ……
そう思った私は、倉田さんへの想いを心の一番深い場所に押し込め忘れ様としていた。でも、それは思っていた以上に困難で、倉田さんを忘れようと思えば思うほど、彼の顔が浮かんでくる。
それに加え、専務の真意もまだ分からず、なんだか精神的に参ってしまい、仕事中もぼんやりする事が多くなっていた。
そして、お盆休みになる前日、森山先輩との会話で、私の心は大きく揺れ動く事になる。
「いよいよだね~。明日、専務と大沢さんの実家に行くんでしょ? 順風満帆! 幸せの絶頂だね」
「幸せの絶頂?」
「そうでしょ? 津島物産の次期社長って言われてる専務と結婚するんだもの。これを幸せと言わず、何を幸せって言うのよ?
この前、経理部の男性社員と合コンした時もアナタと専務の話題でもちきりだったわ。今、この会社で一番幸せなのは、間違いなく大沢さん、アナタよ」