クールな次期社長の甘い密約

倉田さんの心臓の音が軽快なリズムを刻み、私の胸の奥まで響いてくる。いつしかそれは私の鼓動と重なり、溶け合って一つの大きな響きとなって体中を駆け巡る。


が、突然体を起こした倉田さんが鋭い目で私を見下ろした。


「もう二度と聞きませんからよく考えて答えて下さい。これが、私を拒否出来る最後のチャンスです。今拒否しなければ、私は何があっても大沢さんを抱きます」

「最後のチャンスなんて要りません」

「専務を裏切る事になるんですよ?」

「それは、倉田さんも同じじゃないですか。誰よりも大切な専務を裏切ってもいいんですか?」


少しは躊躇いを見せると思ったが、彼は躊躇する事無く私の唇を奪う。


「今まで死ぬほど我慢してきたんです。もう、いいでしょう……」


私達の気持ちは一致し、罪を犯す者同士、光のない暗闇に堕ちていく覚悟を決めた。そして、とうとう私達は超えてはいけない一線を超えてしまったんだ……


こんなにも激しく狂おしく、そして、愛おしく身を委ねた事などなかった。指先から、この髪の一本一本まで、全身で倉田さんを感じ、彼の色に染まっていく……


それは、愛する人と一つになれたという悦びと大切な人を裏切ってしまったという苦しみが交錯した瞬間でもあった。


お互いの温もりを感じながら、私と倉田さんは同じ事を考えていたのかもしれない。


この情事が私達にとって、最初で最後のまぐわりになると……私達に次はないのだと……だからこそ、今この時を、この一瞬を忘れない様に心と体に刻み付けておきたい。


「誰よりも、倉田さんを……愛しています」


この言葉と共に――……

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