クールな次期社長の甘い密約
更に強く倉田さんを抱き締めるが、彼はなかなか口を開こうとしない。
「それに、倉田さんをあんなに信頼していた専務が、人が変わったみたいに倉田さんに辛くあたったのも妙ですし、倉田さんが危険を顧みず、会長の所に行こうとした理由も気になります」
なんとか聞き出そうとしたけど、倉田さんは暫くの間、沈黙を守ったまま何も言ってはくれなかった。でも……
「アナタを抱いてしまったのですから、話すべきなのかもしれませんね……」
観念したのか、彼のため息がまだ少し湿った私の髪を揺らす。
「今から話す事は他言無用です。絶対に誰にも言わないと約束出来ますか?」
いつも以上に低い声で念を押され心がザワついた。
でも知りたい――倉田さんが自分を犠牲にしてまで専務の為に一生懸命になる理由をどうしても知りたい。
「約束します。決して誰にも言いません」
「分かりました。では、話しましょう」
私の体を離した倉田さんが寂し気な瞳で「少し長くなりますが……」そう前置きして話し出した。
「専務は表面上、私を信頼しているように振舞っていますが、本心は違います。私を憎んでいるんですよ」
「専務が倉田さんを憎んでる……?」
「はい。専務がこの世で一番憎いのは、おそらく……私」
「なぜ? どうして専務は倉田さんを憎んでいるのですか?」
「――……それは、私が専務の兄だから……津島貴志と私は、実の兄弟なんです」