クールな次期社長の甘い密約
「君華さんは、自分が子供を産んだせいで私が追い出される事になったと思ったのでしょう。泣きながら会長に縋り、今まで通り私を自分達の息子としてここに置いて欲しいと懇願したんです」
「専務のお母さん、優しい人だったんですね」
「ええ、私は、君華さんのその姿を今でもハッキリ覚えてます」
君華さんのお陰で倉田さんは引き続き津島家で暮らす事になったのだけど、それ以来、倉田さんは自分を大切に思ってくれている君華さんには迷惑を掛けられないと、ひたすらいい子を演じた。
優等生でいる事が自分の使命。勉強でもスポーツでも常にトップでいなければならない。そうやって自分にプレッシャーをかけてきた。だが、そんな優秀な兄を持った弟は兄と比べられ卑屈になっていく。
「私は、君華さんの喜ぶ顔が見たくて必死で頑張ってきました。でもそれは、専務を追い詰める事になってしまったようで、専務は徐々に反抗的になり、学校でも問題を起こす様になりました」
「専務がですか?」
「はい、特に君華さんには反発していましたね。実の子の自分より私を可愛がっていると思ったのでしょう。母親を取られた気分だったのでしょうね」
そして、倉田さんが有名私立中学に入学が決まり、家族でお祝いをしていた時、突然専務が暴れ出し、倉田さんに殴り掛かってきた。
「君華さんの子供じゃない私が君華さんを母と呼び、この家に居るのはおかしい。津島の跡継ぎは自分だから出て行けと……」
社長は烈火の如く怒り、君華さんは泣き崩れた。そして、その様子を見ていた会長が倉田さんに言ったそうだ。
厄介者は、この家を去れと――……