クールな次期社長の甘い密約

社長と君華さんは反対したが、倉田さんは津島の家を出る決心をした。


このまま自分がここに居れば、皆を不幸にする。弟の為に、ここを出て行こうと……


でも、倉田さんは不安だった。心のどこかで、自分は実母に捨てられたんじゃないかと思っていたから……


けれど、お母さんは倉田さんが戻って来た事をとても喜んでくれてた。だが、安心したのも束の間、倉田さんのお母さんは病に侵され余命幾ばくもない状態だった。


「短い間でしたが、母と二人で過ごせて良かったと思っています」

「倉田さんのお母さんは、倉田さんを手放した事を後悔していなかったのですか?」

「さぁ……でも、後悔はしてなかったと思いますよ。母は私が津島の家に行った方が幸せになれると思って父に私を託したと言ってましたし、私をここまで立派に育ててくれた父と君華さんに感謝していると涙を流していましたからね。

しかし私は、どんなに貧しくても母と一緒に居たかった……」


目を細めた倉田さんの睫毛が微かに震えている。きっと倉田さんは君華さんを慕いながら、心の奥底ではお母さんを求めていたんだ。


そして、お母さんが亡くなった後、社長から戻ってくるよう言われたけど、それを断り学校の寮に入った。高校を卒業するまでは、学費や生活費を社長に頼ってしまってしまったけど、大学になるとそれも断った。


これで津島の家とは縁が切れたと思っていたら、大学の卒業を間近に控えた二月、会長から連絡があって津島物産に入社しろと言われたそうだ。

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