クールな次期社長の甘い密約
「すみません、最後にお二人が笑顔で見つめ合うところをお願いします」
カメラマンのリクエストに応じて笑顔を作ろうとするが、顔が引きつってなかなか笑えない。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だから……ほら、笑って?」
そう言って私の肩を抱く専務の優しさに泣きそうになり、益々、笑顔とは縁遠い暗い表情になってしまう。
ごめんなさい……専務はこんなに優しいのに、私は専務を裏切ってしまった……本当に、ごめんなさい。
自分の犯した罪の重さを今更ながら実感し、心の中で専務への謝罪の言葉を繰り返していた。
――それから四日後の日曜日。
私と専務、そして倉田さんは、結婚式を挙げる予定の都内の高級ホテルに来ていた。
ドレス選びが終わるとホテル専属のウエディングプランナーと事前打ち合わせをし、今はチャペルを見学させてもらっている。
「本日行われる挙式は午後からですので、まだ時間があります。どうぞ、ごゆっくりご覧下さい」
この後、式を挙げるカップルの為に生花で飾られた深紅のバージンロード。そして、目の前にはクリスタルで出来た十字架が後方の窓から差し込んでくる陽の光を七色の光に変え輝いていた。
正に、永遠の愛を誓うにふさわしい場所。ため息が出るくらい素敵だ。
そんなチャペル内を言葉もなくグルリと見渡していると専務が私の手を引いて歩き出し、祭壇の前で立ち止まる。
「茉耶……」
向き合った彼の指が私の頬を撫でたと思ったら、なぜか、もう片方の手で十字架を指差す。