クールな次期社長の甘い密約
「ここは真実の愛を誓う場所だ。決して嘘を付いてはいけない場所だろ? ……だから、この十字架の前で茉耶に聞きたい事がある」
唇が触れそうなくらい顔を近付けてきた専務の言葉に素直に「はい」と答えたが、内心穏やかではなかった。
「じいさんが危篤だと知った俺は、茉耶と倉田を残して東京に戻った。あの日の夜、茉耶と倉田はどこで何をしていた?」
「えっ……」
専務は間違いなく疑いの眼差しで私を見据えている。その強烈な視線に私の心臓は今にも止まりそうだった。
「答えろ……茉耶。お前達二人は、あの夜、茉耶の実家には居なかったんだろ?」
どうしてそれを……
反論しなきゃいけないと思ったが、言葉が出てこない。すると倉田さんがゆっくり近付いてきて私の後ろに立つ。
「専務、どういう事でしょう?」
「茉耶の実家が台風の被害を受けたって聞いていたからな。心配になって状況を聞こうとお母さんに電話したんだ。
そうしたら、じいさんの話しになって、あの日の夜、倉田がどうしても東京に帰ると言って茉耶と実家を出たって聞いたんだよ」
あ……
「台風の影響で国道が通行止めになっていたから、お前達は旧道の山道を抜けようとしたが、崖崩れで先に行けず、川が増水して戻る事も出来なくなった……
その事をなぜ、俺に秘密にしていた? 何か言えない理由があったからじゃないのか?」
専務の想像は当たっていた。でも、それを認めるワケにはいかない。だから否定しようとしたんだけど、そんな私を押し退け、倉田さんが専務の前に進み出る。