クールな次期社長の甘い密約
「違います。私はそんなつもりじゃ……」
「もういい! 倉田は俺のマンションを出て行け。秘書も交代しろ! 信頼出来ない秘書など必要ない」
専務の怒号がチャペルに響き渡り、神聖な場所が異様な空気に包まれる。
倉田さんは「分かりました」とだけ言うと一礼し、チャペルを出て行った。その後ろ姿がとても寂しそうに見え、私の心は後悔で押し潰されそうだった。
あぁ……倉田さん、ごめんなさい……
倉田さんが出て行った大きな扉を見つめ放心している私を、専務が強引に引き寄せる。
「茉耶、お前は今日から俺のマンションに来るんだ」
「……それは、専務のマンションで一緒に暮らすって事ですか?」
「そうだ。一緒に暮らすのが少し早くなっただけだ。問題ないだろ? それとも何か? 俺のマンションに来たら俺の目を盗んで倉田と会えなくなるからイヤか?」
「そんな事……思っていません」
「なら決まりだな。今から引っ越しだ」
ホテルを出たその足で私のマンションに行き、取りあえず必要な物をキャリーバックに詰め込む。が、その間も倉田さんの事が頭から離れなかった。
倉田さん、マンションを追い出されて行くとこあるのかな……
でも、専務のマンションに着いた時には既に倉田さんは出て行った後で、主を失った部屋はガランとしていた。
「茉耶、こっちに来い」
呼ばれてリビングに行くと専務が私を隣に座らせ、一気飲みしたビールの缶をグニャリと潰して吐き捨てる様に言う。
「倉田を追い出した俺を恨んでるか?」