クールな次期社長の甘い密約

「秘書課でも倉田課長が専務秘書を解任された事が話題になってるよ」

「そうですか……」

「倉田課長に絶大な信頼を寄せていた専務が倉田課長を切ったんだから、よほどの事情があったんだろうってね。茉耶ちんはなんか聞いてないの?」

「あ、私は何も……」


外でランチを終えた麗美さんが、まだ時間あるからと受付に寄ってくれたんだけど、倉田さんの解任の理由をしつこく聞かれ困ってしまった。


麗美さんには隠し事はしたくないけど、解任の理由を話せば、私と彼の関係も言わなくちゃいけなくなる。私はまだ、麗美さんにその事を打ち明けるかどうか迷っていたんだ。


「それで、専務の新しい秘書は決まったんですか?」

「うん、取りあえず、前に専務の秘書をしてた木村主任が代わりをやってる。でも、木村主任、最近なんだか変なんだよね~」


麗美さんがそう言った直後、お昼に行っていた森山先輩が戻って来て、不機嫌な顔で麗美さんに体当たりする。


「何二人でコソコソ話してんのよ。で、木村がどうかしたの?」


吹っ飛ばされた麗美さんが苦笑いを浮かべ、遠慮気味に木村さんの様子を話し出す。


「あんなにやり手だった木村主任が、仕事中にボーッとしてる事が多くて……それに、有り得ない凡ミスもするし、ちょっと変なんですよ」

「あぁ~それはきっと、大沢さんと専務の結婚が決まったからショックで仕事が手に付かないのよ。ざぁまぁ~みろだわ」


気味の悪い顔で大笑いする森山先輩の背後に漂っていたのは、どす黒い怨念のオーラだった。

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