クールな次期社長の甘い密約
「こ、こわ……」
不気味な笑いが止まらない森山先輩から逃げる様に麗美さんがカウンターから離れて行く。
私も素早くパソコンを閉じ、お昼に行こうとしたら宅急便のお兄さんが受付に荷物を持ってきた。
森山先輩にお任せしようと思ったのに、お兄さんも森山先輩の異様な雰囲気に気付いた様で、先輩に近付こうとはせず、私に直接荷物を渡し疾風の如く去って行く。
「あ、専務宛てだ」
送り主は、あの取材を受けた雑誌の出版社からだった。
突然正気に戻った森山先輩が伝票を確認すると肘で私を突っついてくる。
「ねぇ、それって明日発売される例の雑誌の見本誌じゃないの?」
「そうみたいですね……」
「何よ~嬉しいくせに浮かない顔しちゃって~。今から昼休みだし、ちょうど良かったじゃない。早く専務に届けてあげなさい」
大森先輩の「戻って来る時、一冊貰ってきてね~」と言う声を背に受け荷物を抱えてエレベターホールに向かう。
とうとう発売の日がきてしまった。でも、こんな微妙な状態の時に発売だなんて……間が悪いなぁ。
専務室の前に立ち、深呼吸をしてドアをノックしたんだけど、どんなに待ってもドアが開かない。不思議に思いドアを開け中を覗いてみると役員受付には誰も居なかった。
なので勝手に中に入り、専務が居る部屋のドアをノックしようとた……その時、ドアの向こうから甲高い女性の怒鳴り声が聞こえてきたんだ。
んっ? この声は……木村さん?