クールな次期社長の甘い密約
専務……酷い。
「貴志……本気で言ってるの?」
「その呼び方はやめろと言ったはずだ。もう、俺とお前は関係ないんだからな!」
「そんな……」
一番喜んで欲しい人に邪険にされ、泣き崩れる木村さんが哀れで見ていられなかった。そして、木村さんに申し訳ないという気持ちが私の胸を締め付ける。
私が専務の前に現れなかったら、木村さんは今でも専務と付き合っていたかもしれない。そうすれば、木村さんのお腹の赤ちゃんだって祝福されていたんだ。
ごめんなさい……私のせいで、ごめんなさい……
震える手でドアを閉め専務室を飛び出すとエレベターホールに向かって全力で駆け出す。
麗美さんが木村さんの様子がおかしいって言っていたのは、きっとこの事が原因だったんだ。専務に言えずに思い悩んでいたんだよね。なのに、専務は木村さんを傷付ける様な事を平気で言った。
優しい人だと思っていたのに……
遣る瀬無い思いで視線を落とすとエレベーターの到着音が鳴り、扉が開く。
「あっ……」
エレベーターに乗っていた人の小さな声に反応して顔を上げると今一番会いたい人が立っていたんだ。
「倉田さん……」
彼の顔を見たとたん涙が溢れてきて、後先考えず倉田さんに抱き付いていた。
「どうしました?」
一瞬戸惑った様子の倉田さんだったが、すぐに私をエレベーターの中に引き込み扉を閉める。
「こんな所で抱き付くなんて、自殺行為ですよ」
「分かってます。でも、木村さんが……」