クールな次期社長の甘い密約

私の意味深な言葉に麗美さんは敏感に反応し、目を輝かせて理由を聞いてきた。


「すみません、仕事中なので、また後で……」


誤魔化してこの場を去ろうとしたんだけど、麗美さんの「そうそう、木村主任の事で凄い情報があったんだ」の一言で完全に足が止まり、背中に冷たいモノが走る。


「木村さんの……情報?」


顔を引きつらせ振り返ると予想通りの言葉が返ってきた。


「あのね、木村主任、おめでたですって!」

「あぁぁ……」


こんなに早く皆に知られる事になるなんて……


絶句する私に麗美さんは得意げな顔で続ける。


「今月末で寿退社するらしいよ。木村主任ったら、今朝の朝礼で突然妊娠したから会社を辞めるって言い出して、秘書課は大騒ぎだったんだから~」

「えっ?」


寿退社っていうのは普通、結婚する時に使う言葉だよね。木村さんのお腹の子供は専務の子なんだから、他の男性と結婚するなんて有り得ないのに。


「それで、木村さんのお相手は……?」

「うん、それがね、誰かは事は教えてくれなかった」


倉田さんはお互い納得して解決したって言ってたから、木村さんも専務の名前を出さなかったのかな? そう思うと益々二人が納得した解決方法が気になる。


……あ、もしかして、木村さんの子供は専務の子供じゃなかったとか? だから、あんな深刻な問題が僅か一日でアッサリ決着したのかもしれない。あれは木村さんの自分を捨てた専務への嫌がらせ? 


でもそうなら、倉田さんはなぜ私にその事を話してくれなかったんだろう。

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