クールな次期社長の甘い密約
「他にもまだ借金があったそうだな。この際、全て返済してスッキリした方がいいと思ったんだよ。茉耶の親は俺の親でもあるんだ。子供が親を心配するのは当然の事だろ?」
専務は善意で両親を助けてくれたんだ。ここまでしてもらって感謝してもしきれない。でも、その善意が私を雁字搦めにしていく。
これだけの恩を受けた私は一生、専務には逆らえない。
そんな事を考えつつ歩いて行くと専務が"藤の間"と書かれた部屋の前で立ち止まり、木の格子戸を開ける。その部屋は、日本庭園を臨む広い和室で、既に私の家族と社長は到着していた。
しかし、来るのは両親だけだと思っていたのに、おばあちゃんとあの診療所の先生まで一緒に来ていたんだ。
「なんで先生が来てるの?」
隣りの母親にこっそり聞いてみたら、先生も家族になる可能性があるから連れてきたとか言っている。
「おばあちゃんと先生、ホントに結婚するの?」
「してもらわないと……大事な金ヅルなんだから」
「お母さん、本気で言ってるの?」
どうやら先生を私の家族として連れて来てプレッシャーを掛ける作戦らしい。専務に借金を全額返済してもらったのに、先生の財産まで狙っているとは……なんてしたたかな母親なんだろう。
そんな母親とは対照的に、父親は緊張気味に社長にお酌をしながら恐縮しまくっている。
「こんな立派なホテルで結婚式を挙げてもらえるなんて、茉耶は幸せ者ですよ。それに、貴志君には借金返済を助けてもらいなんとお礼を言っていいやら……本当に有難う御座います」