クールな次期社長の甘い密約

「……痛い。専務、放して下さい」


痛みに耐え切れず専務の手を振り払おうとしたけど、それを拒む様に私の腕を掴む専務の手に力がこもる。


何も言わず血走った目で睨む専務に戸惑っていると部屋の襖が開き、息を切らして倉田さんが入って来た。


専務が電話した相手は倉田さんだったんだ……


すると専務はやっと私の手を放し、倉田さん目掛けて突進して行く。そして、なんの躊躇いもなく力任せに倉田さんを殴ったんだ。


鈍い音と共に倉田さんの大きな体が一瞬宙に浮き、そのまま畳の上に倒れ込む。


「いや……専務、やめて下さい!」


突然の出来事に動転し、二人の間に割って入るが、結果的に倉田さんを庇う形になってしまいそれが専務には気に入らなかったのだろう。蔑む様な目で私を見下ろす。


「お前達二人に、危うく騙されるところだったよ」

「どういう事ですか?」

「どういう事? それはこっちの台詞だ。お前達は、俺に隠れてコソコソ会っていたんだろ?」

「そんな事……」

「ないと言うのか? じゃあ、これはなんだ?」


投げ付けられたスマホを拾い上げ、その画面を見て愕然とした。


「抱き合ってるのは、間違いなく茉耶と倉田だよな?」

「あぁぁ……」

「画像はそれだけじゃないぞ。全部見てみろ!」


専務が何を言いたいのか大体想像がついた。これは、倉田さんに木村さんの事を聞くために会った時のモノだ。この後、私と倉田さんは……


自分の予想が当たってない事を祈りながら震える指で画面をスクロールする。

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