クールな次期社長の甘い密約

「私を……騙していたんですね」


そうだよね。会長と私のひいおじいさんの関係を知ったから専務は私に興味を持ってくれたんだ。でなきゃ、専務ほどの人が私を好きになるなんて有り得ないもの。社長になる為に私を好きなフリをしていただけ。


唇を噛み締め潤んだ目で専務を見上げる。


「……婚約は、解消して下さい」


愛されていないのが分かっていて結婚なんて……


「はぁ? 今更やめるなんて出来るワケないだろ?」

「でも、専務の気持ちを知ってしまったら、もう結婚は……」

「出来ないか? なら、結納金は倍返し。それと昨日、茉耶の実家に振り込んだ一千三百万と合わせて五千三百万返してくれ」

「えっ……」

「そうすれば、婚約は解消してやる」


そんな大金私に払えるはずがない。もしかして、それが狙いで借金の肩代わりをしてくれたの?


脱力してその場に座り込むと専務が私の顎を持ち上げ、不敵な笑みを浮かべる。


「俺と別れて倉田の所に行こうなんて考えるんじゃないぞ。倉田にだけは、絶対に茉耶を渡さない」


この時、初めて専務が怖いと思った。そして、倉田さんに対する憎しみの深さを感じたんだ。


「心配するな。結婚すれば、それなりに幸せにしてやる」


呆然としている私の唇に渇いた唇が重なる。愛情のない偽りのキスだと分かっていても拒む事は許されない。それは、憎しみと嫉妬が入り混じったとても苦いキスだった――……

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