クールな次期社長の甘い密約

――そして、週明けの月曜日、専務にクビを宣告された倉田さんは出社しなかった……


彼が心配で何度も電話をしたけど、倉田さんが電話に出る事はなく、泊まっていたホテルも既にチェックアウトしていた。


秘書課の麗美さんなら何か知っているんじゃないかと思い聞いてみたが、総務部の部長から溜まっている有給の消化だと説明を受けただけで詳しい事は何も分からないと言っていた。


私が倉田さんに木村さんの事をしつこく聞かなければ、専務の怒りを買う事もなかったのに……今更悔やんでも遅いけど、せめて一言、倉田さんに謝りたい。


そんな事ばかり考えていたから仕事も上の空で、森山先輩に何度も注意され更にヘコむ。ようやくお昼になり、どんより沈んだ気持ちのまま社食に向かうとエレベーターを降りた所で声を掛けられた。


「大沢さん、久しぶりだね」

「あっ……常務」


私が役員専用の社食に間違えて入ってしまった時、優しく接してくれてご馳走までしてくれた常務。あの時と同じ笑顔だ。


以前の失礼を詫び、一般社員用の社食に行こうとすると常務が私を呼び止め役員用の社食を指差す。


「せっかくだから一緒にランチしませんか?」


しかし、さすがに役員の方々に混じってランチするのは気が引ける。丁重にお断りしたんだけど、常務は笑顔で私の手を引き役員専用の社食に入って行く。


「まぁ、いいじゃないですか。丁度、大沢さんと話しがしたいと思っていたところです」

「私と……ですか?」

「えぇ、倉田君の事でね」


えっ、倉田さんの事?

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