クールな次期社長の甘い密約
「悪いが、それも言えない」
「でしたら、私が直接倉田さんに聞きます。彼の居場所を教えて下さい」
必死で頭を下げたけど、常務は困惑した表情で首を振る。
「倉田君が今どこに居るかは僕にも分からないんだよ。電話をしても出てくれないからね。ただ、メールの返事は返ってくるから、深くは追及せず、様子を見ているところなんだが……」
私がメールしても返信はないけど、常務にはメールしているんだ……
「そうですか……それでは、私が話しをしたいと言っていたとメールして頂けないでしょうか? 私がメールしても読んでくれないかもしれませんから」
常務は必ず伝えると約束してくれた。そして、最後に一つ。私にどうしても確認しておきたい事があると言う。
「大沢さんが本当に好きなのは誰なのですか?」
「えっ?」
「僕が大沢さんに話しがあると言ったのは、この事を聞きたかったからです。アナタは本当に専務と結婚したいと思っているのですか?」
一番答え辛い質問だった。だから、すぐには答えられず、自然に常務から視線が逸れる。
専務の本心を知った時から彼に対する愛情は無いに等しい。でも……
「私が結婚を断ったら、家族を不幸にしてしまいます。私さえ我慢すれば、皆が幸せになれるんです」
「家族? それはつまり、家族の為に仕方なく専務と結婚するという事ですね?」
痛いところを突かれ何も言えずに居ると常務は周りの目も気にせず、私の手を強く握る。