クールな次期社長の甘い密約
カフェを出ると森山先輩が私の背中を押し、ニッコリ笑う。
「仕事の事は気にしないでいいから、今すぐ会長の所へ行ってお願いしてらっしゃい」
完全に迷いが消えたワケじゃないけど、他にいい方法が思いつかないのだから仕方ないと自分に言い聞かせ、走ってきたタクシーに手を上げた。すると麗美さんが私の手を取り「ごめんね」って言ったんだ。
「元はと言えば、私と小沢さんの問題だったのに、茉耶ちんを巻き込んじゃって……本当にごめんね」
麗美さん……そんな事気にしてたの?
「麗美さんは私の友達です。大切な友達を侮辱されて黙っているワケにはいきません。私は小沢さんを引っ叩いた事、後悔してませんから」
笑顔でそう言うと停車したタクシーに乗り込む。
「神聖ハートセンターまでお願いします」
しかし、病院が近付いてくるにつれ不安になってきて、病室のドアの前に立った時には逃げ出したい気分だった。
何度も深呼吸をし、勇気を出してドアをノックすると中から「はい」という会長の声が聞こえてきた。
おっかなびっくり特別室のドアを開けてみれば、これが病室かと見紛うほどの豪華な室内。まるで高級ホテルのスイートルームの様だ。で、会長はというと窓際のベットの上で大好物のシュークリームを食べていた。
良かった。会長一人だ。
「おぉっ! 茉耶さん、来てくれたのかね?」
大喜びの会長に、お見舞いに来るのが遅くなった事を詫び、来る途中の花屋さんで購入したフラワーアレンジメントをベット横のキャビネットの上に置く。その間も心臓は激しく鼓動していた。