クールな次期社長の甘い密約
案の定、定時前に専務から連絡があり、大切な話しがあるから仕事が終わったらすぐに地下駐車場に来るようにと言われた。
私が駐車場に行くと既に専務が車の中で待っていて、慌てて車に乗り込んだ私を一瞬だけチラッと見た。しかしそれっきり、マンションに着くまで彼が私の方に視線を向ける事はなかった。
あの画像が社内に広まって噂になっている事を怒っているのか、それとも会長に何か言われたのか……どちらにしても専務の機嫌が悪いのは確かだ。
マンションの部屋に帰るとリビングのソファーにドカリと腰を下ろした専務が自分の隣りを指差し、ここに座れと命令する。
素直に従い隣りに座った私を専務は暫くの間、無言で見つめていた。怒鳴られると思っていたから、何も言われないのが逆に不気味で、心臓の鼓動が早くなり手に汗が滲む。
そして、遂に沈黙が破られ専務が発した言葉は――「もう会社には行かなくていい」だった。
「俺に送られてきた茉耶と倉田の画像が一般社員にも流れている。おそらく俺が社長になる事を反対している奴らの仕業だろう。そうやって社員を煽って俺の社長就任を妨害するつもりだろうが、そうはいかない」
専務はそんな風に考えていたんだ。
「ったく……この一番大事な時に、どいつもこいつも俺の邪魔をしてくれる。これ以上、足を引っ張られて堪るか! 茉耶は結婚式までここに居ろ。一人で外に出る事は許さない」
「えっ……結婚式までって……それまでここを出るなと?」
「そうだ。ついでに茉耶のスマホも預かる」