クールな次期社長の甘い密約

いつも強気な専務が驚き戸惑っている。


その様子を見た私は、ここぞとばかりに心の中で燻っていた不信感をぶちまけたのだけど、それが専務の逆鱗に触れてしまった様で、いきなり胸ぐらを掴まれた。


それでも怯む事無く専務を睨むと「俺に逆らうヤツは女でも容赦しない」と右手を大きく振り上げる。


「どうぞ気が済むまで殴って下さい。それで専務が別れてくれるなら構いません」


しかし、私の覚悟を彼は笑い飛ばす。


「なるほど、殴られるより俺と別れる方がいいのか? だったら殴らないでおく。茉耶とは絶対に別れない」

「えっ……」

「そうする事が、倉田を一番苦しめる事になるからな。自分が惚れた女が他の男のモノになる……さぞかし辛いだろうな」


薄ら笑いを浮かべる専務を見て、彼の倉田さんに対する憎しみは尋常ではないと恐怖を覚えた。




――この日から私はマンションの鍵も取り上げられ、専務が一緒じゃないと外出もさせてもらえない。もちろん、逃げ出そうと思えば出来た。でも、私が居なくなれば、私に関わった人達に迷惑を掛ける様な気がして……それが怖かったんだ。


実家の家族には、結婚準備で忙しくなったから会社を辞めたと嘘を付き、スマホの調子が悪いので、用事があったら固定電話に掛けて欲しいと伝えた。


しかし、その固定電話も専務が履歴を毎日チェックしていて、私が倉田さんと連絡を取っていないか確認している様だった。


スマホがないから麗美さんや大森先輩の電話番号も分からないし、もうどうする事も出来ない。

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